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How to Set the Conditions for Innovation
イノベーティブなアイデアを実行するにはクリエイティビティが必要だ。そしてそのクリエイティビティは、時にはチーム皆でアイデアを出し合い、またある時には個人で集中して作業する、現代のチームのダイナミックなニーズにフィットした仕事環境の下でこそ醸成されるものである。
現代の組織がよりイノベーティブで活力溢れる存在を目指す上で、チーム間でのクリエイティブな問題解決力を高めるために職場空間や働き方を柔軟に変えていくことは必要不可欠である。
IDEOは2015年、クリエイティブでイノベーティブなチーム作りのあり方を評価、ガイド、トラックするためのデジタルツールであるCreative Difference (C∆) をローンチした。
それ以降我々は、100を超える企業におけるイノベーションを評価し、効果的で持続可能な職場環境を創り出しているリーダーは、チームに対し、実験の機会やクリエイティブな問題解決のチャンスをより多く与えているということを発見した。そしてこのようなチームは、現状に囚われたままのチームを凌駕する傾向にある。
では、あなたの企業を今以上にイノベーティブにするために、あなたに起こすことのできる変化とはどのようなものなのだろうか?既にその変化が起き始めているのであれば、その変化を広げていくためにあなたは何ができるだろうか?このような変化は、デジタルツールの導入や業務フローの刷新、現代の柔軟な働き方をサポートするようなモジュラー型の職場空間の検討など、極めてシンプルな方法から始めることができる。ここでは、手始めにできる5つの方法を紹介したい。
1. チーム間で共有されたビジョンを作る
チームメンバーに対し、彼らは日々何を目指して仕事をしているのか、またそこに辿り着くためにどのように行動を変える必要があるのかを示すため、チームとしての未来を描こう。ここで描かれる将来に向けたビジョンは、何を変えるべきかについての共通理解を生むだけでなく、それ以上に「なぜ」そのような変化が必要なのかをきちんと説明するものでなくてはならない。まず、誰のためにやっているのか、チームとして提供することのできる価値は何なのか、目標達成のために何をしなくてはならないのかを明確にしよう。次に、チームとして取るイニシアチブの範囲をある程度制限するためのガイドラインの束を設定しよう。これにより、一度に手を広げすぎてフォーカスを失ってしまうことを防ぐことができる。そして、これらのガイドラインを組織としての戦略的優先順位と照らし合わせ、プランが十分にスケールしそうか、自身のビジネスにプラスのインパクトを与えそうか、またチームとしての日々の業務に影響を与えられそうかを確認しよう。C∆のデータによると、目的意識に基づいて意思決定を行なっているチームは、それを行なっていないチームと比べ、ローンチを成功させる確率が61%高かった。
2. チームメンバーをより良い職場づくりに介入させる
組織は度々、個人の責任の制限やコントロールの維持を目的に、チームの働き方を過剰に制限する。しかしながら、行き過ぎた監視はクリエイティブな判断やコラボレーションを抑制してしまう。さらにこの縛り付けは、自分は大きな機械の中の歯車に過ぎないのだという認識を従業員に与えてしまう。自分の仕事が重要なものでないと感じれば、彼らは精神的にも感情的にも自身を組織から切り離してしまうだろう。一方で、リーダーがメンバーのニーズを把握した上で職場環境をデザインしていれば、チームメンバーはよりエンゲージメントを強め、新しい行動を受け入れてくれる可能性が高まると考えられる。
あなたのチームの中で共有されたバリューやビジョンが、職場においてどのように示されているかを考えてみてほしい。実験の精神の価値を象徴する初期のプロトタイプは置いてあるか?共有スペースは本当にコラボレーションを促しているか?(もしくは、そもそも共有スペースはあるか?)
現代における職場環境は、従業員の最も生産的な行動を一方的に要求するのではなく、促進するようなものでなくてはならない。ここでのポイントは、クリエイティブワークに必要不可欠な要素であるコラボレーションや実験を促すような環境をデザインすることであり、またそれをチームの新たなチャレンジに対する適応力を高めつつ行うことである。C∆のデータは、互いにコラボレーションしながら働き、フレキシブルな職場や実験のためのツールを持つチームは、そうでないチームと比べてプロジェクトを成功させる確率が32%高いことを示している。
3. チームメンバーの働き方の実情を知る
ありがちな話だが、多くのリーダーはチームメンバーがどのように働いているのかを詳しく把握しておらず、これはすなわち、彼らが自身のメンバーを成功へと導くための条件を作り出す方法を知らないということである。あなたのチームメンバーが好きなこと、嫌いなこと、会社の状況についてどのような変化を望んでいるのかをよく把握するため、きちんとチェックインの機会を持とう。既存のツールやスペースを型破りな方法で使い、与えられたリソースを最大限生かす力を持つ「職場環境ハッカー」に常に目を向けよう。また、それぞれのメンバーが必要としているツールがきちんと提供できているかどうかに気を配ることも大切である。例えば、オンラインコラボレーションツールへのアクセスが制限された組織では、メンバーがそのようなツールから簡単に得られるはずの恩恵を得るために、プロジェクトマネジメント、ファイルのシェア、メッセージのやりとりのためのソフトウェアをそれぞれ別々に組み合わせて使わなくてはならなくなるだろう。
4. 全てはプロトタイプから始まる
ブレインストーミングの新しいやり方、より効率的な職場についてのアイデアを思いついた?高い能力を持つチームとともにそのアイデアをプロトタイピングして試してみよう。大切なのは完璧な解決策から始めることではなく、効果があって継続的に改善していける何かに辿り着くことである。変化に対して情熱を持つチームを見つけ、そこから始めよう。また、従業員にアイデアを求めることを忘れないで。全ての変革がトップダウンで行われる必要はないし、チームメンバーの方が彼ら自身のニーズをより良く理解しているはずだから。プロトタイピングは反復プロセスなのだから、チームは様々なアイデアを試す自由を与えられるべきなのだ。C∆のデータによると、並行して5つ以上の解決策を試すチームは、そのようなプロトタイピングを行わないチームに比べて、成功した解決策を生み出す確率が42%高いという。
5. 学びを体系化しシェアしよう
チームが成長し成熟していく中で、チームメンバーが職場環境についての様々な実験を通じて得てきた教訓は、まとめられてより大きな組織へとシェアされるべきである。効率的な職場環境の特徴を体系化することは、新しい従業員がより早く生産的な行動を取るための助けとなる。チームメンバーがプロトタイピングを通じて得た学びを共有し、他のメンバーが同じような行動の変化を取り入れたり彼ら自身で実験を始めたりと行ったきっかけ作りになるようなイベントやプログラムの企画を考えてみよう。C∆のデータは、先行事例へのアクセスを持つチームはそうでないチームに比べて、成功した解決策を生み出す確率が51%高いことを示している。
変化を生み出し、メンバー自身に最適な職場環境を自ら決定していくよう促すことは、イノベーションを生むための土壌づくりとしてリーダーが活用することのできる最もパワフルなツールである。このような変化は、企業が不確実な環境の中で戦うための能力に必要不可欠なインパクトをもたらすだろう。しかしながら、このチャレンジの巨大さを恐れてはならない。必要なのは、共感とエンパワーメント、そして自分自身、そしてチームを自己発見の旅へと引き入れる好奇心だけである。
クリエイティブ·ディファレンスに代わり、現在は新たに開発した「Creativity Index」という組織アセスメントツールがご利用いただけます。導入にご興味をお持ちの場合は、IDEO Tokyoまでお問い合わせください。