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コーヒーカップが教えてくれた、宇宙旅行とデザインの未来

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Apr 23 2021

この記事を読む前に、まずコーヒーを淹れよう。とっておきのコーヒーができたら、ジップロックバッグの中に注ぎ込んで、ストローで飲んでもらいたい。これが宇宙での飲料の飲み方だ。お世辞にも美味しそうとは言えない。

もちろん、これには理由がある。飲料がパックに入っていれば、液体が飛び散って宇宙船内の電子機器に付着することを防げるからだ。しかし、コーヒーを飲むという行為は単なる水分補給ではない。多くの人々にとって、朝のコーヒーは頭のスイッチを入れるための大切な儀式でもある。

この朝の習慣を宇宙でも再現したいと強く思ったのは、2008年に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在したNASAの宇宙飛行士、ドン・ペティだ。ドンはISSで迎えたある朝、とうとうストローでコーヒーを飲むことに飽きてしまった。熱々のコーヒーの香りを楽しみ、啜って目を覚ます『体験』が恋しくなったのだ。

そこでドンは船内で見つけた透明フィルムを材料に、宇宙でも使えるカップの試作に取りかかった。無重力下での液体の動きを利用して、コーヒーが壁を登ってカップの縁に達するようにちょうど良い角度でフィルムを折り曲げた。そうして誕生したのが、涙型の「ゼログラビティ・カップ」だ。この発明によって、ISSに滞在するすべての宇宙飛行士は、コーヒーに限らずお好みのドリンクをカップに注ぎ、乾杯をし、地球を眺めながら味わえるようになった。

これまで各国の宇宙機関が重視してきたのは、宇宙飛行士の安全性を最大限に高め、コストを最小限に抑えることだった。その観点は今後も変わらず重要であり続けるが、この「おいしいコーヒーを飲みたい」というドンの素朴な願いは、これから宇宙旅行ビジネスが発展する上で考慮しなければならない数多くの欲求のひとつだ。一般人が宇宙に行くようになると、旅行者が宇宙でも人間らしく、より快適に過ごせるための体験をデザインすることが大切になる。

快適な宇宙旅行体験を目指して

ISSへの3日間の宇宙旅行のチケットが当たったと想像して欲しい。宇宙での生活なんてスターウォーズやスタートレックのようなハリウッド映画でしか観たことがないあなたは、抑えきれない不安とワクワクを胸に当日を迎えるだろう。

出発の日の朝、用意されたファッショナブルな宇宙服を身に纏い、宇宙船に乗り込む。そしてカウントダウンの合図とともに、地面が割れるような振動が全身を揺さぶり、体が座席に張り付く。すると数分後、急な静けさに包まれたと思ったら腕がふんわりと浮かびあがる。シートベルト解除のサインを確認したあなたは、他の乗客と一緒にフワフワと窓際に近寄り、自分の目前に浮かぶ地球の姿に思わず息を呑む。すぐに写真を撮り、インスタグラムに「#地球は本当に青かった」と投稿する。数時間後にISSに到着し、待望の3日間が始まるのだ。

しかし無重力環境になかなか慣れないあなたは、船内の電子機器やほかの旅行客にぶつかり、最初は笑い飛ばすが、徐々に気まずくなっていく。そしてポーチに入った食事を取り、チューブ型のトイレで用を足しながら残りの数日間を過ごす。初日の感動も時間とともに薄れ、最終日には人生最高の旅行がまるで試練のように思えるかもしれない。

このようなことが本当に起こると、せっかくの宇宙旅行が台無しになってしまう。そこで、ドンの遊び心に溢れた好奇心に感銘を受けたIDEOの有志が集まり、宇宙での滞在をより快適で楽しくする方法を模索し始めた。

1. 「遊び」で導く

無重力というと聞こえはいいが(そして科学的には微小重力なのだが)、私たち地球人にとっては身体的負荷が多い環境でもある。例えば、振り向くという単純な動作でも、今までとは全く違う身体の使い方が求められる。短い滞在期間を最大限に楽しむためには、できるだけ早く体の使い方を学び直す必要があるだろう。

ディズニーランドがテーマパークにおける「待ち時間」を「楽しい体験」に変えたように、身体的に辛くなりがちな無重力に慣れるための時間を、より楽しい旅のひとつの体験として再設計することは可能だ。遊びを通して、人々が無重力環境でより快適に過ごすための体の使い方を学ぶ手助けができるだろう。

私たちは幼い頃、好奇心と創造力に任せて日常の未知を探検し、視界に入るあらゆるものから刺激を受け、すべてを「遊び」に変えてきた。床をマグマに見立てて、椅子やクッションの上を飛び跳ねながらバランス力を鍛えたり。お互いの影を踏む遊びをしながら、時間と影の長さの関係について学んだり。この無邪気な世界の捉え方を、宇宙旅行にも応用できないだろうか?

2. 打ち上げから帰還までが宇宙旅行

宇宙旅行のクライマックスは、意外にも軌道上にたどり着いた最初の瞬間かもしれない。それは同時に、滞在中に徐々に興奮が冷めていく可能性も暗示している。

私たちは大人になるにつれて、場所から場所への最適な道のりを探すことに集中するあまり、道のりそのものを楽しむことを忘れがちだ。宇宙旅行も例外ではない。ISSに到着すれば、90分ごとに昇る日の出、宇宙から眺めるオーロラ、まるで電車からのぞく景色のように目の前を過ぎ去っていく大陸など、宇宙ならではの体験がたくさん待っている。さらに、地球の大気圏に再突入しながら窓の外が赤く光る光景、そして地上に着陸する瞬間の衝撃も貴重な体験の一部だ。その一つ一つの体験をつなぎ合わせて興奮のボルテージを徐々に上げて、テンションマックスの気分で旅の終わりを迎えられるような体験が望ましい。

どのようにすれば、打ち上げから帰還まで、宇宙ならではのユニークな瞬間が、グランドフィナーレまで続くような宇宙旅行プログラムをデザインできるだろうか?

3. 誰もが楽しめる体験デザイン

SpaceX社のクルー・ドラゴンによる世界初の民間宇宙飛行士ミッションには、骨肉腫サバイバーで、金属製のロッドを左足に入れているヘイリー・アルセノーが搭乗する。宇宙飛行士の選抜では身体面を含めた厳しい条件をクリアする必要があるが、民間宇宙飛行の基準は異なる。

ヘイリーの選抜は、宇宙に行ける人の定義が変わってきていることを象徴している。近い将来、さまざまな身体障がいを持つ人々が宇宙を訪れるようになるだろう。さらに、耳の聞こえない人は宇宙酔いに強い傾向があるなど、地上での不自由が宇宙では有利に働くケースもあることが証明されている。重力に縛られない世界では、障がいという概念さえも覆される。

地球上では健常者であっても、宇宙で生活すれば思わぬ事故は起きるだろうし、新たな障がいが出てくることも予想される。宇宙ジャーナリストのミリアム・クレイマーがAxiosに寄稿した記事で述べたように、「身体障がい者のために宇宙船を設計すれば、すべての宇宙飛行士の生活がより快適になる」のだ。

例えば、無重力環境は視力の低下を引き起こすことが知られている。そこで、視覚障がいを持つ人も宇宙旅行を楽しめるように、状況の変化を音や感触で伝えることはできないだろうか?五感を刺激する体験や船内構造をデザインすることで、誰にとっても快適で楽しい宇宙旅行を実現できるはずだ。



宇宙旅行の台頭は、人々の地球に対する意識を大きく変えるきっかけになるだろう。そのきっかけを最大限活かすためにも、最高に快適な旅行体験をデザインすることが重要になる。

もちろん、最初に宇宙に行けるのは裕福な人たちばかりだ。しかし、そのようなアーリーアダプターにとって最高の滞在を提供することが産業の発展を加速させる。やがて、より多くの人々が宇宙旅行を通して地球とより良い関係性を育むチャンスを与えてくれるだろう。

そして、無重力環境ではあらゆる常識が覆される。音楽バンドの「OK GO」の言葉を借りれば、「Gravity is just a habit (重力はただの癖)」だ。その体に染み付いた癖を一旦忘れることで、日常に隠れた人間らしさについて考え直し、あらゆるモノやコトを一からデザインできる。重力に縛られない世界では、誰もが子供のように未知と遊びながら日常を捉え直すことができるのだ。

次回はこれらの考え方を体現した、宇宙旅行をより快適で楽しくするコンセプトをいくつか紹介していく。それまで、みなさんのアイデアを是非聞かせてもらいたい

  • Tomoya Mori

    Senior Business Designer, IDEO Tokyo
    Tomoya is a business designer at IDEO Tokyo, where he works at the intersection of technology, science and business design. He is constantly looking out for hidden connections between seemingly unrelated subjects, and strives to turn them into viable and impactful innovation—be it new business models, experiences or brand strategies.
  • Keren Wong

    Senior Business Development Associate, IDEO Play Lab
  • Cory Seeger

    Environments Design Lead, IDEO Tokyo
    Cory is an architect who explores weaving atmosphere and emotion into physical and virtual environments. Before IDEO, he worked for Michael Maltzan Architecture, junya.ishigami+associates, and indie game developer HomeMakeLabs. Cory earned his Master of Architecture from Harvard University Graduate School of Design.
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