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“今回のプロジェクトを通じて、『考えるためにものをつくる』というアプローチを学んだ。” ー パナソニック株式会社 主任研究員 柳川 博人氏

パナソニック株式会社 先端研究本部の皆様へのインタビュー

Q. IDEOとのプロジェクトがスタートするまでの経緯と、当時の課題についてお聞かせください。

柳川氏:当時、10年後に世に出す予定のある最先端技術のテーマ/コンセプト設定について、内部でなかなか皆が納得できるものが生まれず、外から新たな「知」とアプローチを取り入れよう、と議論していました。

これまで、私たちの属する先端研究本部は、研究だけに没頭する傾向が強く、自分たちの研究成果がビジネスに繋がるかどうかは、年に一度の展示会でビジネスユニットが判断する、というのが慣例でした。ただ、これからは、「今自分が取り組んでいるこの研究を、どうビジネスに活かしていきたいか」という視点で仕事に取り組むことも必要なのではないか、という課題意識がありました。

今までの世の中は、WHAT(何をすべきか)は明確で、HOW(それをどうやるか)だけの勝負だったと思うんです。例えばテレビだったら、「薄くすべき」というのは明らかで、研究者は「どうやって薄くするか」だけ考えればよかった。でも今は、WHATや、WHY(WHATの根底、背景に何があるか)を見つけなければならない時代です。そのためには、まず”人”を中心に考え、その次に事業、技術を考えるという、一見回りくどいけれど大切なことに気づきました。そのための新たな視点やアプローチ、アイデアを共有してもらうことを、IDEOに期待しました。

Q. 今回の10週間に渡るプロジェクトを、どのように評価されていますか。

奥村氏:想像もしていなかった、自分たちでは導き出せなかったような結果が出てきました。切り口、ターゲット、顧客のセグメントといった機会領域全体を、これ以上ないくらいに明確に打ち出せたと思います。だからこそ、これをどう形にするか、というところがこれからの大きな課題だと思います。

Q. 「ものづくり」において、何か新たな発見や気づきはありましたか。

柳川氏:これまで、研究や技術ありきで、まずはものができてから考え、議論し、サービスや商品を作ろうとしていました。今回のプロジェクトを通じて、『考えるためにものをつくる』というアプローチを学んだのは大きかったです。まずはプロトタイプでもベータ版でもいいから世に出してみて、そこから研究テーマを探求していくというやり方もありなんだなと。

Q. もともと「デザイン思考」にご関心をお持ちだったとのことでしたが、実際IDEOと共にこのアプローチを経験してみていかがでしたか。

奥村氏:元々上司たちが「デザイン思考」に注目しており、スタンフォード大学のd.school*に研修に行ったり、弊社の海外の研究所で「デザイン思考」を研究するスタッフから話を聞いたりもしていました。当時は正直、あくまでいろいろある手法の一つで、「自由に楽しくアイデア出そうよ」というようなものかなと思っていました。

でもIDEOとの協働を経て、これは頭が柔らかい人が集まればできるようなものではないな、と気づきました。頭の使い所が違うんですよね。今までは、アイデアを出すところが苦しかった。でも、アイデアを出すこと自体はすごく楽しくてシンプルなものであり、アイデアをグルーピングしたところから何が見えてくるか、何を見出すか、というところにもっともクリエイティビティや想像力が必要なのだと学びました。また、一度まとめたものに対して、いろんな人のアイデアやフィードバックを取り入れてまた膨らませ、広げてみるという作業は、なかなか勇気のいることだなあとも思いました。つい、日頃はなるべく早くまとめよう、としてしまいますから。でも、このプロセスがあるから、どんどんアイデアが良くなっていくのでしょうね。

Q. プロジェクトで、印象に残っているのはどのようなことですか。

柳川氏:個人的には、IDEOのプロジェクトメンバーたちと米国サンフランシスコとボストンにリサーチに行き、スタートアップを肌で感じたことが強く印象に残っています。いかにスピード感を持ってアイデアを実践的なものに発展させていくかということを知る目的のリサーチトリップでしたが、4日間で6,7件のバイオテック系やものづくり系スタートアップと引き合わせてもらって、刺激を受けました。

Q. このプロジェクトを通じて組織にどのような変化がもたらされましたか。

柳川氏:組織が大きくなると、セクションは縦割りになり、なかなか他の事業部を巻き込むことは難しい。しかし、今回IDEOの皆さんから、「できるだけ早い段階でビジネスユニットを巻き込むべき」、とアドバイスをもらっていたので、今回のプロジェクトについてはすでに企画担当の部門に声をかけています。この研究は、通常より早い段階で事業化に向けたプロトタイプを進められると思います。

あとは、IDEOの紹介で、同じパナソニックのなかの遠く離れたある事業部門にいる、同じような志を持つ人間と繋がった、ということもありました。先日の我々のIDEOとのプロジェクトのミッドフェーズで挙がった16のコンセプトのうち、今回は不採用だった3つのアイデアをその事業部が拾ってくれて、我々先端技術本部の技術を使いながら事業計画や商品企画に落とし込めないかと、前向きに検討しているのです。社内の「新しいことをやろう」という気概を持ったイノベーティブな人と出会うきっかけをIDEOが作ってくれて、新しいものが生まれようとしていることに、わくわくしています。

Q. IDEOに今後どのようなことをご期待されますか。

柳川氏:この先端技術の機会領域とテーマが明確になった今、次の「形にする(ユーザー・プロトタイピング)」ステップを一緒に経験してみたいですね。あとは、ほかの技術についても、IDEOの視点を入れたらもっと面白いかも、と思っています。

奥村氏:我々からは出てこないような、「驚き」のあるアイデアに期待します。市場調査や、何かを分析してまとめてほしいときに外部コンサルタントにお願いすることはありますが、そういう時にはIDEOには頼まないと思います。答えのない難題に取り組むとき、またご一緒したいと思います。

Q. 最後に、今一番情熱を感じていることをお聞かせください。

柳川氏:今回のプロジェクトの成果を形にして、世の中に「パナソニックはこう変わったんだ」というところを見せたいです。世界に誇れる技術力やこだわりはあるのですが、組織として新しいことにチャレンジすることはあまり得意ではないなかで、先端技術本部において小さくてもいいから成功例を作っていきたいと思っています。


ご協力:

パナソニック株式会社
先端研究本部 デバイス研究室 バイオ研究部 バイオフォトニクス研究課主任研究員 博士 奥村 泰章 様
主任研究員 柳川 博人 様

Sep 2016

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