Building Beacons In Peru

Public Digitalがビーコン(灯台)型プロジェクトをペルーで実践

先日ペルーのリマに所在するIntercorp社が運営する、La Victoria Lab -ラ・ビクトリアラボ(LVL)に行ってきた。彼らのいくつかのチームが直近でリリースされたプロダクトのレビューをしている場に、Public DigitalのパートナーであるIDEOと参加するためだ。

LVLはペルーのGDPの4%を占める27社からなる巨大コングロマリットIntercorp社が運営している、イノベーションラボであり、Public Digitalにとっても初期の頃のクライアントの一つである。2014年頃にIDEOの役員であるLuis Cilimingras経由で紹介された。 LVLはIntercorp社の変革を促進している「ビーコン(灯台)」(イノベーションの象徴であるプロジェクト)をグループ会社と一緒に促進している。

世に出すことにこだわったイノベーション

それぞれの「ビーコン」は、それぞれ異なる専門性を持つ多様なメンバーによって構成され、アジャイル手法を取り入れながら、解決できる具体的な課題を取り扱っている。これらビーコンプロジェクトから、すでに以下のようなアウトプットがグループ会社の各社から出てきている。

  • 薬局のInkaFarmaでは、ホームデリバリーサービスの立ち上げ。

  • 銀行のInterbankからは、起業家向けのペイメントプラットフォームのTunki

  • 教育機関のUTPからは、UGO Estudiantesという学生が学びたい専門性をもった人とつながれるサービスの開発。

Intercorp社は巨大であり、グループ33社でペルーの約4.0%GDPを担う(2018年の時点で)。グループ全体を見渡すと、それはまるで政府の省庁のようだ。

グループ33社(2018年の時点)

大規模で、複雑な構造を持つ組織をデジタルトランスフォーメーションする際、中心となって変化を促進していくチームの存在が重要であると常に説いている。Intercorpにとってその役割は、IDEOが彼らと一緒に創り上げたLVL(La Victoria Lab) が担った。La Victoria Labは多様な専門性をもった共創型チームが、アジャイルなアプローチで価値創造を実施しているラボだ。

コラボレーションを優先すると全体の速度が落ちることもあるが、LVLが設立時から勢いを失わずにできているのは、プロダクトをデリバリーすることに焦点を当てているからだ。そのためにLVLでは、社内のチームや転職者と常にトレーニングし、ベストプラクティスをシェアし、テクノロジーとビジネスの最新情報に触れられるようにしている。最も大切なのが、LVLが単独でこれを進めているのではなく、必ずグループ会社、事業部の人々を巻き込んでいる点だ。これらが全て揃ってこそ、彼らはプロダクトを世の中にデリバリーし続けることに成功している。

IDEOのLuis Cilimingrasが言っていたことだが、「イノベーションは高い。ただトランスフォーメーションは安い。」LVLが実践しているビーコン方式はイノベーションへの近道であり、Intercorpの全体におけるデジタルトランスフォメーションを推し進めている。

LVLのオフィスに貼られているポスター。「ユーザーの発言ではなく、彼らの行為・行動を観察せよ」

信じられるミッションを

私たちPublic DigitalはLVLとの仕事が大好きだ。私たちに*Tunkingという言葉を教えてくれたのも彼らだし、スマートであたたかい人々でもある。そして何よりも、「ペルーを、ラテンアメリカで最もファミリーに向いている場所にする」というミッションを掲げている点が最も魅力的であり、一緒に仕事をしたくなった点だ。
*Tunking - LVL内で使用されている言葉で、悪いところも含めて正直に包み隠さずフィードバックを与えて、受け入れるという彼ら独自の文化。 
IntercorpのChief Innovation OfficerのHernan Carranzaは前向きで周りを活気づけてくれるリーダーだ。彼のチームは、常に現状を打破しようとしており、リスクを取ることを恐れない。それもあり、LVLが設立されて4年ですでに、Intercorp内に人間中心の発想が既に根付いている。

LVLのオフィスに貼られているポスター。「プロダクトは常に完成しない永遠に完成しないもの。だからリリースしよう!」 。

我々が実践してきたことについて

「プロダクトやサービスを世にリリースすること、それを現場のチームに徹底させています。これは現場だけでなくマネージメント層が、良いデリバリー(プロダクトをリリースする行為)とはどういったものなのか?を理解してもらうためでもある。」と我々は良く色々な場所で言ってきた。そしてこれはまさにIntercorpで我々がやってきたことでもある。

Public Digitalが主にサポートした領域は以下になる。

  • α版にフォーカスしたプロジェクトからスタートし、それをスケールさせていくためのサポート(チームが育ち、チーム自体のサイズと中身についてもサポートしていく)

  • サービスデザイン、アジャイルについての理解と実践ができ、周りに教えることができる人材の採用。

  • スケール可能なテクノロジーの選択や検証(James Stewart氏のサポート)

  • デジタル・トランスフォーメーションの必要性についてCEOやシニアリーダーシップ層が認識するためのサポート。

  • Intercorp内のテクノロジー関連を担当するリーダーシップ層をまとめ上げるサポート

  • Emily Webberのアドバイスをもとに、Community of Practice の設立。

初日のエンゲージメントは、まずプロダクトレビューからスタートした。実際に3つのビーコンチームが取り組んでいる具体的なプロダクトをリビューしながら、前述した”tunking”を実践した。プロダクトフィードバックをしていた、そのセッション自体の雰囲気は素晴らしいものだった。タフな質問やフィードバックに対しても、チームとグループ会社のCEOたちはきちんと対応してくれて、その内容や姿勢からも彼らの熱意と、実際のユーザーを理解し、非常に強い絆をユーザーとも築けていることが垣間見れた。常に前向きで、エネルギーを感じさせたし、何よりも強い決意を感じさた。これらはプロダクトの成功には欠かせないものだ。
二日目からはケーパビリティについての話に焦点を当てた。チームリーダー等とまずは3ヶ月後を見据えて、望む変化を生み出すために必要なサポートを明らかにしていった。実際にチームをスケールしていくのは難しい。そこで我々は課題を整理できるような質問の仕方を実践していった。例えば、「ユーザー数が20名くらいの規模で必要なチームは?200ユーザーだったら?2000ユーザーだったら?」、「オペレーションはその際にどう変わるだろうか?」、「自動化させていくとしたらどのようにするだろうか?」、そして「それを体験を届けるために本当にアプリ化する必要はあるのだろうか?」などだ。
三日目では、中長期の視点を入れながらIntercorpグループ全体のプラニングの話をした。現在動いているビーコンを活かしながらそれぞれのグループ会社に効果的なインパクトを与えるために必要なことを話したり、リーダーシップ層が「良いデジタルプロダクト」を理解し、評価できる目利きになるために必要なトレーニングについてのディスカッションがなされた。昼食の時間では、私の方から大会社においてプロダクトマネージャーをやることの難しさについて話した。プロダクトがどんなに良いものであっても、それとは別にチームダイナミクスについて整理したり、ビーコンチーム自体の成長、スケールの必要性について説いた。
Intercorpでは大小含めてさまざまな変化が同時に起こっている。彼ら自体は非常に「ビッグ」な視点や発想を持っている。デジタルトランスフォーメーションに取り組む前に、IDEOと一緒に新しい学校システムを0から立ち上げたりしたこともあり、彼らの描くビジョンは非常に大きなものになっている。私の知るところ、これだけの大きなビジョンを持ちながら、注意深く考え、かなり繊細なプラニングをしつつ、大規模な投資をしているのは世界中をみても彼らくらいだろう。このような会社と一緒に仕事ができるのは非常に誇らしいし、常に良いインスピレーションをもらっている。

「Chanck Hard」 は、口語的にWork Hardと同類の意味。

この記事はPublic Digitalのブログの内容を翻訳しています。

Sep 2018


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