WORK
A Holistic, Human-Centered Approach to Managing Diabetes Care
ホリスティックで人間中心の糖尿病治療管理アプローチ
The Challenge
デジタル時代にふさわしい包括的な糖尿病管理システムを創造する
The OUTCOME
2型糖尿病患者が、より健康で幸せな生活を送れるような習慣を定着させるための一気通貫型のプログラムの開発
アメリカ疾病予防管理センターによると、米国の糖尿病患者はほぼ3,000万人と、人口の10%近くに上ります。その大多数は2型糖尿病と診断され、通常は投薬、ダイエット、運動を組み合わせた治療が行われます。ただ、糖尿病患者のうち、病気の管理と、推奨される生活習慣の改善に関して医療従事者から十分な指導を受けているのは、わずか15%にすぎません。今求められているのは、信頼できる情報へのアクセスです。
70年以上にわたり糖尿病治療をリードしてきた世界的なヘルスケア企業、アセンシアダイアベティスケア(Ascensia Diabetes Care)は、主に血糖測定機のメーカーとして知られています。IDEOは10年以上も前からAscensiaと連携し、2016年にはコントアネクストワンメーター(CONTOUR NEXT ONE METER)の開発とデザインをお手伝いしました。Ascensiaは2017年、同社の業務範囲を装置以外にもデジタル領域にも広げるという新たな目標を掲げ、IDEOを起用しました。Ascensiaは糖尿病患者の指導と監視について、これまでに類を見ないアプローチを思い描いていました。そしてIDEOとのパートナーシップにより、単に血糖値を読み取り、食料摂取量を記録するだけでなく、本人の健康に影響するすべての要因を考慮する包括的なソリューションを構築しようとしました。
AscensiaとIDEOは深い協業を通じ、アプリベースのサービスを作り上げました。このプロジェクトでは、患者体験に関する戦略的ビジョンに始まり、最終的には、包括的なサービスを考えました。IDEOでは、医療従事者のトレーニング、パッケージング、アプリのデザイン、コンテンツ制作、ビジュアル・デザインを含む一体型医療サービスを考え、提供しました。
運動と栄養を含む個別プランを、糖尿病療養指導士による1対1のサポートで、ユーザーに適応。
これにより、患者はデータと普段の生活のトラッキング、実生活に生かせる指導、パーソナライズされたコンテンツを得ることができました。参加した患者にはそれぞれ、担当の糖尿病療養指導士(CDE)が付き、個別のニーズに基づいてプログラムを策定するとともに、料理、精神衛生、性の健康といったトピックに関する妥当な記事を紹介しました。IDEOチームは、指導者の採用とトレーニング、指導内容の作成、さらにはコンテンツ管理周りのデザインも進めました。
このプログラムの際立った特性は、アプリを駆動するデータエンジンにも表れています。このアプリは、エクササイズバンドや血糖測定装置という複数のソースからデータを収集することで、恒常的なフィードバックを提供し、進捗状況を追跡し、継続的にユーザー体験を良くしていきます。IDEOのデータサイエンティストたちは、アプリの初期データセットを構築するだけでなく、共感を得るために、自ら製品のテストを行いました。あるデザイナーは、ありとあらゆる運動モニターデバイスを彼女の手首に身につけ、毎食後に血糖値をチェックしました。
アプリベースのサービスで、糖尿病患者は適切な時期に適切な情報にアクセスするとともに、質問があればいつでも、チャットを通じて担当の糖尿病療養指導士に答えてもらえるようになった。
このアプリとサービスは、60人でテスト運用され、素晴らしい初期結果を出しました。途中でプログラムを辞退したのはわずか2名でしたが、これは先進国の慢性疾患治療の遵守率が 平均で50%程度であることから見て、驚くべき成果と言えます。しかも、参加者は心身の健康の大幅な改善を報告しています。最近、夫に先立たれた70歳の女性は抑うつ状態から立ち直り、また水泳を始めたほか、血糖値も正常に戻りつつあります。
結果的に本プロジェクトはAscensiaにとって、従来のやり方を変え、社内の商品開発アプローチを変えるプロジェクトでもありました。また、最終的には糖尿病患者へのサービス提供方法の幅を広げる必要も生まれたことで、自分たちの製品・サービスの自体の定義をより幅広く捉え直す機会にもなりました。
アプリのみならず、ユーザーに新しい健康的な睡眠習慣や気持ちの持ち方などを紹介するホリスティックなユーザーキットが自宅に直接配送されます。