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10年で体感した10の変化について

English version.

2011年の3月1日、原宿のキャットストリートから少し離れた小さなマンションの一角からIDEOの東京オフィスはスタートしました。当時、社員は3名だけ。手探り状態でミーティングを重ね、学びながら日本でのIDEOの在り方について考えていました。

そして、2021年3月現在、IDEO Tokyoは表参道の交差点にオフィスを構え、社員は40名以上に増えました。設立当初から変わっていない、「デザインとクリエイティビティを通じて、日本の変化に貢献する」というミッションを実現するため、デザインコンサルティングのみならず、ラーニングや組織変革のお手伝い、そしてベンチャーキャピタルまで幅広い領域に事業を展開しています。

この10年間、私たちが常に目を凝らし、耳を澄ましながら、新たな機会を探求することができたのは、日本市場の特異性が関係しています。日本は他の市場と比べても、ビジネスのやり方だけでなく、文化的にも魅力的かつユニークな特徴があり、こうした環境で事業を立ち上げるのは私たちにとって大きなチャレンジでした。しかし、制約や「制限」は創造性を高めてくれるように、日本におけるクライアントの皆さんとの仕事は、常に私たちの好奇心をくすぐり、新たな視点と刺激を与えてくれました。

本ポストでは、この10年間に私たちが感じた10の「シフト(変化)」についてご紹介したいと思います。これらは過去10年を振り返るだけでなく、これからの10年を考えていく上でも、大切な視点だと考えています。

ダヴィデ・アニェッリ, マネージングディレクター

    Ongoing Digital Transformation

    前進するデジタルトランスフォーメーション

    約10年前、スマートフォンの保有者は14.6%で、利用していたネットワークは3G。LINEはまだなく、企業でクラウドサービスを利用していたのは14%だけで、人々は帰宅途中にまだDVDレンタルショップに通っていました。そんな時代から2021年になり、政府はデジタル庁を創設することを発表し、DX(デジタルトランスフォーメーション)は多くの人々が意識しているテーマです。

    IDEOでもこの変化を体感することができました。10年前よく頂いた依頼の内容は「アプリが欲しい」、「未来のIoTを考えて欲しい」、「デジタルサービスを考えて欲しい」などキーワードが先行するケースが多く、そこで何をしたいのかはあまり考えられていませんでした。やがてスマートフォンが当たり前のように日常に溶け込みはじめると、人々は上質なデジタル体験を経験することが増え、依頼の内容も変化していきました。ナビアプリに一貫したデジタル体験を持ち込んだり、デジタルのヘルスケアサービスの体験全般をデザインしたり、農家や仲卸の方々を支えるためのテクノロジーを導入したり、組織におけるデジタルチームの内製化を後押しするなどをしてきました。

    依頼内容やデザインの中身などは変化してきましたが、人に着目するというアプローチは常に変わっていません。デジタルトランスフォーメーションの成功に欠かせないのは、ユーザーに留まらず、あらゆる「人」を常に意識し、彼らのためにテクノロジーを近づけていくというスタンスです。

    田仲薫

    A More Circular Economy & Mindset

    循環型経済へのシフトとマインドセットの変化

    すでに日本でも他社との差別化、優位性を築くという観点からサステイナビリティを自社の戦略の核としている企業が増えています。ちょうど10年前の2011年、東北大震災を経験した私たちは、エネルギーの在り方だけでなく、つくる責任、つかう責任などについても考えはじめ、より持続可能な方法を模索し始めました。

    日本は東京2020オリンピックを開催する上で、持続可能性をテーマに掲げました。気候変動や天然資源の枯渇、差別等の人権問題等、持続可能性に関する世界共通の課題に向け、課題解決のモデルを国内外に示すと記しています。また、「SDGs」というキーワードはここ3年でより注目され、日本政府も2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。


    循環型社会への移行はそれなりの時と労力を伴い、長期視点が求められます。ただ、世界の長寿企業ランキングの創業100年、200年の企業数で日本は1位です。こうした日本企業は、単に株主だけに目を向けるのではなく、幅広いステークホルダーのことを考えて行動してきました。日本は今後、この循環型経済の領域において、ビジネスだけでなく、人々、社会そして地球を視野に入れたポジティブなインパクトを生み出していくでしょう。

    アメリア・ジュール

    Creativity Powering Business Performance

    創造性がビジネスパフォーマンスを促進する

    世界経済フォーラムが発表した「Future of Jobs Suvery(仕事の未来)」によると、2025年に求められる15個のスキルの内、クリエイティビティ(創造性)は5番目に大切であると示されました(2010年では10番目)。創造性が発揮しやすい組織では、専門性が混ざった横断型のチームもコラボレーションがしやすく、人々は良いインスピレーションを得られ、課題を機会と捉え直す柔軟性も育っていきます。これらは新しい価値やソリューションを生み出す源泉となります。

    日本では東京、京都、福岡などで、R&D、ラボ、イノベーションチームの拠点が生まれ、そこでは起業家精神を持ち合わせた人々が集まっています。スマートフォンやモバイルゲームなどの領域で活躍するAppleやGoogleに対して、任天堂は、常に新しいコンソールとオリジナルのゲームを生み出し、利益だけでなく世界中の人々に幸せを届けています。

    これからの10年間を考えた際、組織には、自分たちは実はクリエイティブなのだと信じられるマインドセットの構築と、ソリューションを提示するのではなく、正しい問いを投げかけ組織を引っ張っていけるリーダーシップ、そして好奇心、クリエイティビティ、イノベーションが持続できるための環境づくりが求められます。

    ネイサン・パタソン

    Growing Diversity & Inclusion

    ダイバーシティとインクルージョンについての意識の向上

    ダイバーシティはビジネスでの競争優位性をもたらしてくれると言われています。日本は単一民族国家であると言われ続けてきましたが、近年それは変わりつつあります。女性やLGBTが働きやすい職場の在り方についての議論は増え続けると同時に、外国籍の人々を雇う企業の割合も増えてきました。スポーツの日本代表チームにおける状況や、そのほかの文化などビジネス以外の領域でも、多様性に変化が見えてきました。

    IDEO Tokyoの強みを支える一つの要素が、異なる才能を持つ多様な人材です。私たちは、さまざまな社内習慣やイベントなどを通じて、その一体感(oneness)と独自性(uniqueness)を意識し高めてきました。例えば、IDEOversaries(アイディオとアニバーサリーを組み合わせた造語)では、同僚の入社記念日を毎年一緒に祝い、感謝を伝えたり、毎年恒例のIDEO Storiesは、発表者が自らの人生において大きなターニングポイントとなったようなエピソードや学びを共有する場です。 IDEOドラァグクイーンコンテストは、私たちの内側に存在する隠れた自分を解き放つ場でもありました。

    これからの10年に求められるのは、人それぞれの視点や価値観を認め、その多様性を活かす場を創ることのできる組織が増えていくことではないでしょうか。同時に、組織として一体感(Oneness)と「和 (harmony)」を称え、生みだすことも一つのゴールになっていくでしょう。

    アメリア・ジュール

    Balancing Workplace Dynamics

    働き方の変化 

    日本では、2018年の「働き方改革関連法」の成立以来、企業においてさまざまな試みがなされてきました。そんな最中に起こった新型コロナウィルスの感染拡大は、企業に今まで以上に抜本的な変革を迫り、通勤や勤務形態といった今までなかなか着手されなかった部分にも議論が及ぶきっかけとなりました。

    今でも残業時間やダイバーシティ、平等性やインクルージョン、キャリアパスの多様性等、多くの課題が残されています。一方で、この10年でIDEOがクライアントと取り組むデザインチャレンジの議論は、かなり変化してきたといえます。例えば、10年前は「どうすれば社員一人ひとりの考え方やマインドセットを変えられるか」といったテーマの相談が多く寄せられました。しかし最近は、「いかに組織全体のカルチャーを変革できるか」、またその結果、「働き方が企業のクリエイティビティにどようなインパクトを与えるか」といったものにテーマが変化してきています。

    今私たちは、未来の働く「場」のあり方や指針、環境だけでなく、そこにどのように新たなテクノロジーを織り込んでいけるかなどを議論し、働き方について非常にダイナミックに考えていくことのできる、エキサイティングな時代に来ているのではないでしょうか。

    野々村健一

    From Passive to Active Lifelong Learning

    受動からより能動的な生涯学習へ

    2006年の教育基本法により、日本の教育は21世紀型の学びに変わりつつあり、よりアクティブ・ラーニングな方法へ、そして生涯学習を支える社会へシフトしています。また日本は、OECDが進めているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査でも世界レベルに達しています。ある高等専門学校では、従来型のアプローチに加えて、プロジェクトベースドラーニング(PBL)を実験的に採用もしています。大学でも生徒がより主体的に学び、キャリアを考えられる環境づくりに取り組んだり、入試の制度そのものを見直して、テストの点数以外も重視するような仕組みを導入しています。

    しかし、教育周りの改革はまだ始まったばかりです。学ぶモチベーションを見出せない学生、自己肯定感を得られず悩む学生など、課題はまだ多く存在します。Googleの実践した調査によると、自主的に調査や調べ物をする学生は平均して16%のみしか存在せず、これは北米、中国、韓国などと比べると非常に低い数値です。政府は、生涯学習社会を目指すために、創造・自立・協働の3つの理念を掲げていますが、長い道のりとなることでしょう。

    IDEOでは、このような状況に向けて、布石を打ってきました。ペルーでは国の教育システムに大きな変革をもたらすような学校を一から作りタイでも先進的な新設校のビジョン作りを手伝い、ここ日本でも様々な教育機関とクリエイティブ・コンフィデンス(自らがクリエイティブであるというマインドセット)を育てる取り組みを進めてきました。また、創造性を生かした課題解決やマインドセットを体感するためのデザイン・キャンプを高校生向けに開催しています。

    私たちは、生涯学習の機会は、全ての人々のために提供されるべきであると信じています。またその機会においては、クリエイティブ・コンフィデンスが身につき、多種多様な人々とのコラボレーションと、グローバルなコミュニケーションを自然と享受できるような人を育てるプログラムをデザインする必要があるでしょう

    ネイサン・パタソン

    Reimagining Tourism

    観光における新たな兆し

    2011年に起こった東北大震災は、日本の観光産業に大きな影響を与えるだろうと思われていました。しかし2013年以降、世界中から多くの人々が日本を訪れました。結果、日本は世界でも有数の観光地へと急速に進化していきました。その勢いは目を見張るもので、2010年に約860万人であった訪問者数に対し、2019年にはその数は約3,200万人にも及んでいました。また、日本の食や芸術を始めラグビーワールドカップやG20等も加わり、2010年代は世界が日本を再発見した時代となりました。

    パンデミックにより移動や観光が制限された今、日本は観光やホスピタリティについて再考しなければならないタイミングにきています。移動制限が緩和される未来をもくろみ、既に新たな体験テクノロジービジネスモデルについての検討も進んでいます。

    IDEO Tokyoでの議論されるテーマも、10年前は観光客をいかに増やすかというものが多かったのに対し、最近では国内外へ向けた日本のホスピタリティの未来のあり方を考えたりとこれからの時代を見据えたものへと変化しています。

    野々村健一

    Greater Care for Wellbeing

    ウェルビーイングの浸透とケア

    2035年、日本の人口の3人に1人が65歳以上になり、すでに世界1位の平均寿命も伸び続けることでしょう。高齢化が進む中、より注目されているのがこれからのウェルビーイングについてです。

    過去10年を振り返って見ると、日本は身体的健康に関してはかなりの進歩があったと言えます。例えば、AI問診を利用することで医師がより患者さんに集中できるようにしたり、疾患の早期発見をサポートすることが実現されました。これからの10年では、寿命を長くするだけでなく、人それぞれがより意味のある生き方を叶えるサポートをしていく必要があります。

    デジタルツールが溢れ、常に繋がれるテクノロジーが存在しているにも関わらず、現代人の多くは寂しさを感じて生きており、精神的なウェルビーイングのケアが求められています。IDEOでは、これらの課題にヘルスケアサービスと「食」などの要素を組み合わせることで、人々がより主体性を感じながら、生活に潤いを与え、身体的かつ精神的なウェルビーイングの実現に取り組めるようにしていきたいと考えています。

    岩下恵

    A Growing Entrepreneurial Ecosystem

    起業を支えるエコシステムの増加

    ダヴィデ・アニェッリ

    北米と比べると日本のベンチャー周りのエコシステムは未だ創成期なのかもしれません。ユニコーン企業の数も国の経済規模に比べると少ないのが事実です。ただ、ここ10年を振り返るとスタートアップの数、投資額などの数値は少しづつですが上昇しています。

    それと同時に起業家精神、起業という行為自体に対しての社会受容性は高まり、失敗のリスクと成功も含めて理解する人が増えてきました。成功した起業家がメディアでも多く取り上げらえるようになり、政府もさまざまな形でスタートアップを支えています


    以前から長年スタートアップを支えてきたIDEOとしては、この流れを推し進めるべく日本でも起業家精神の投資・育成を実現するために、ベンチャーキャピタルファームのD4V (Design for Ventures)を2016年にローンチしました。グローバル規模で日本のスタートアップが競争し、成功していくのは秒読みであると私たちは信じています。

    A Rising Soft Power Superpower

    ソフトパワーの台頭 

    ダヴィデ・アニェッリ

    世界第3位の経済大国ということ以外に、日本がこの10年間で認知された点の一つにソフトパワーがあります。日本の独自性の高い文化、コンテンツはアジアのみならずグローバルで影響力を示しています。

    漫画、アニメ、ポケモンJiro Dreams of Sushi ファッション, 建築, 無印, こんまりメソッド(近藤麻理恵氏)など、日本に対する興味は尽きず、従来のいわゆるステレオタイプな日本のイメージを超えて理解する人々も増え、(コロナ以前では)訪日外国人数も増加の一途を辿っていました。

    それらの積み重ねが2019年のラグビーW杯やG20サミット、予定されている東京オリンピック・パラリンピック2020年といった大規模イベントの成功にも繋がっているのかもしれません。これからの10年を考えると、教育、政府・政治への信頼回復、ジェンダー・イクオリティなどのエリアでより改革が求められます。今回、コロナ禍で加速したデジタルトランスフォーメーションの波が、うまく日本の社会経済的安定性と組み合わさることで、これらのテーマの推進されていくことを願っています。

    Illustrations by Mark Dingo Francisco

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