The Challenge
拡張する幼小中高一貫校の学びの体験ーカリキュラムから教員研修、校舎に至るまでーをリデザインし、将来拡張することを見据えながら、世界で通用する質の高い教育を誰でも手の届く費用で提供する
IMPACT
イノーヴァはペルー国内に60以上の学校を開校し、2020年度までには52,000人の生徒を受け入れる予定で、現在では国内最大規模の私立学校ネットワークとなった。2019年には、メキシコ国内にも1校目を開設し、1,000人以上の生徒を受け入れた。
The OUTCOME
カリキュラム、教育戦略、校舎、運営プラン、学校のネットワークを運営し、迅速にスケールすることを可能にする財務モデル
どうしたら新興国の中流階級を元気づけることができるだろうか?
それはペルーのアントレプレナー、カルロス・ロドリゲス-パストールが向き合っていた課題でした。のちに彼はIDEOと協働し、新しく先進的な学習モデルを備えた教育機関を立ち上げました。IDEOに委ねられたこと、それは将来的な拡張を視野に入れつつ、世界に通用する質の高い教育を、手の届く費用—月々およそ100ドル台—で提供することを目指し、カリキュラムから教員トレーニング、校舎に至るまで、イノーヴァの幼小中高全体の教育をリデザインすることでした。
イノーヴァは銀行、小売店を含む35企業を抱えるインターグループの一社であり、自社のポートフォリオに学校を加えました。2010年にはイノーヴァブランドのもと、5校を開校しましたが、既存の教育モデルにこれ以上の伸び代がないことに気付きました。国内の地価の上昇や、十分なトレーニングを受けた技術力の高い教員が不足しているという事実もあり、イノーヴァが成功するには根本的な方向転換が必要でした。
世の中のスケール可能な学校モデルについて学ぶため、IDEOのリサーチャーは、インスピレーション溢れる学校や教育プログラムを訪ねたり、小売、サービス、ヘルスケアなどの類似産業が、スケールする際にどのようなアプローチを取るかに着目しました。プロジェクトを通して、チームは教員、生徒、そしてイノーヴァチームと協働し、共に設計を進めました。
イノーヴァチームとIDEOは、カリキュラム、教育戦略、校舎、運営プラン、複数の学校ネットワークを運営するための財務モデルを作り上げました。
カーンアカデミーのサルマン・カーンからは、次のようなコメントが寄せられました。
「イノーヴァには衝撃を受けました。最も裕福な国の競合校にも匹敵するクオリティの高い教育が、手の届く費用で受けられる学校ができたなんて、素晴らしいと思います」
生徒たちが教室で学ぶ様子を描いた初期のスケッチ
新しいイノーヴァ・スクールズでは、教員が指導する少人数のプロジェクトベースの学習と、デジタルの学習ツールを活用した個人学習を組み合わせました。教員は生徒の課題をオンラインで管理し、個人に合わせた指導を行います。保護者も同様、オンラインで子供の学習状況を確認することができます。
コミュニティスペース、メディアラボ、屋上学習エリア、講堂、カフェといった動的な学習環境は、キャスター付きの家具や可動式の仕切を使用したり、さまざまな学習スタイルに合わせ空間の有効活用をしたりと、順応性の高いものに仕上がりました。
この国の未来は、次の世代にどのような教育するか、私たちの腕にかかっています。IDEOは国際的な質の教育をペルーにもたらしてくれるような学校モデルをデザインする手助けをしてくれました。
カルロス・ロドリゲス-パストール、インターコープCEO
オンラインのティーチャーリソースセンター(Teacher Resource Center)には、新しい教育法に基づく18,000以上の特別に作られた授業プランのデータベースがあり、教員が教育方法や授業技術を習得したり、学校ネットワーク内で情報交換ができる場でもあります。
イノーヴァのビジネスモデルは学校体験と時を同じくして作り上げられました。IDEOのデザイナーは学校ネットワークや全ての学校が共に学ぶことのできるデータシステムのような集中型ツールを構築することによって得られるスケールメリットを活用しました。
本プロジェクトによって、イノーヴァはペルーの一般家庭が手の届く費用で通うことのできる学校をさらに増やすことができ、結果的にはペルーの若者にグローバルエコノミーの中で競争できる機会を与えることになりました。学校システムの設計に対するこの包括的なアプローチは、ラテンアメリカ内で最も野心的な個人出資の教育プロジェクトの一つであり、イノーヴァは最大規模の私立学校ネットワークになりつつあります。現在までに、イノーヴァはペルー国内に63もの学校を開校し、2020年度までには52,000人の生徒を受け入れ、そして、2018年にはメキシコで初めての学校を開校し、1,100人以上の生徒を受け入れました。2020年には更に3校開校する予定です。
学習アプローチは、個々が自発的に取り組む自習時間と、グループ学習を組み合わせている。
良い学校システムのデザインは、戦略で終わることはありません。ロドリゲス・パストールは、このイノーヴァ・スクールズのプロジェクトは社内にも多大な影響を与えたと感じています。新しい役割や皆で決めた価値観を作り出すことによって、イノーヴァのオフィスはより一層、機敏でクリエイティブな組織に変化を遂げました。社員は新しいイノベーションを起こすと同時に、生徒に最良の教育を提供するために、常に興味のアンテナを張り巡らしています。成長する学校ネットワークの日常的な管理の一部としてデザインシンキングを組み込むことができるということをイノーヴァはこのプロジェクトを通して学ぶことができました。