Big QuestionsOur work related to complex challenges.

The Challenge

音楽を軸に異なる文化とコラボレーションし、地域と世界に向けて発信する新たな音楽大学に生まれ変わりたい

The OUTCOME

新設キャンパスのコンセプトと、それを再現する学びの体験をデザイン

東京音楽大学 (TCM)は、創業以来、100年以上にわたって多くの音楽家を輩出してきた。しかし、急激に変化が加速し始めた時代の中で、学校のあり方を刷新しなければならないという危機感があった。

同校は、都内有数のグローバルな流行発信地である代官山に、新たな第二キャンパスの建設を予定していた。これを機に、クラシック音楽を主軸にしながらも、学生が活躍の幅を広げられるような新たな学校のコンセプト、学びの体験をデザインしたいと、彼らはIDEOに依頼した。

プロジェクト発足後、IDEOのデザイナーたちは、ロンドン、ニューヨーク、ボストンの教育機関、音楽学校、芸術施設などを訪れてインサイトを得たのち、TCMの学生たちにもインタビューを行った。

海外の音大生は、在学中の早い段階からキャリアプランについて熱心に考えており、多様性のある教育のなかで、様々なスキルやマインドセットを身につけていた。一方、TCMの学生たちは、クラシック音楽を学び、演奏することに意識が集中しており、仕事の面における自らの様々な将来の可能性について、明確に描くことができていなかった。

IDEOは、TCMの新キャンパスについて、「文化・領域・人が垣根を越えてコラボレーションする」ことを大テーマに、4つの具体的な方向性を示した。まず、学生がクラシック音楽という枠を超えて、ビジネスマインドや起業家精神を養うこと。次に、より多くの本番体験、学外のプロとの協業、共創の機会を増やすこと。そして、大学をプラットフォームと位置付け、学内外に自然とコミュニティが生まれる場を目指すこと。最後に、外の世界に呼応して進化を続け、テクノロジーとデジタルに強い人材を育成すること。これらの方向性が、キャンパス内のさまざまな空間と、その場で生まれる体験のデザインに反映された。

ピアノの鍵盤をモチーフにした「音楽の道」と呼ばれる通路は、キャンパスを縦断して中目黒と代官山を繋ぎ、人とまちとキャンパスの融合を促している。

もっとも象徴的なのは、「クリエイティブ・ラボ」だ。もともと図書館になる予定であったこの場所は、学内外の多様な人が行き交い、革新的なアイディアを創出・発信できる空間、をコンセプトにデザインされた。学生や教職員が団欒を楽しむカフェテリアを内包するオープンスペースは、様々な目的に合わせてレイアウトを変更できる。学生が即興スキルを磨くためのライブ演奏を行うことはもちろん、異文化やビジネス、新たなテクノロジーを学ぶワークショップなども開催できるよう、フレキシブルなスペースをデザインした。

休み時間には多くの学生や教職員で賑わい、自然と垣根を超えたコミュニティが生まれる場となっている。

配置された家具やツールは、他学部の学生や教員との偶発的な出会いや会話を促すようなものを厳選し、活気ある人の流れを創り出す空間をデザインした。

デッドスペースになりがちな渡り廊下の踊り場などにも、こうした「場」を意図的に創ったことにより、学生たちにとって「今まで話す機会がなかったような、異なる専攻の学生とも交流を深めるきっかけになっている*」という。(*学生の声。)

地域社会にも広く開かれた新たなキャンパスで、多様な視点と能力、仲間を得た多くの学生たちが、音楽を軸に世界の様々な場所でインパクトを出していくことだろう。

空間や家具によって、人の流れがデザインされていることが素晴らしいと思いました。今はどこのスペースにも、学生が溢れています。池袋キャンパスでは、見られなかった光景です。また、IDEOが提案した、「あらゆる垣根を越えていく」というコンセプトは、空間だけでなく、様々な分野を融合した実践的な教育プログラムにも活かされています。

東京音楽大学職員 在間 聡子氏

IDEOは、「無から有を生み出す」会社だと感じました。彼らは、現状を分析して問題点を列挙し、改善策を提示する、というやり方ではなく、「ゼロから東京音楽大学を創るとしたら、どんな学校にしたいですか」という問いからスタートしてくれた。そのアプローチに、大変魅せられました。彼らがデザインしてくれたこの新たなキャンパスで、音楽文化の新たな地平を拓きたいと思っています。

東京音楽大学 鈴木 勝利 理事長

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